シェラに対するお仕置きも終わり、その後もいくつかの外湯めぐりを終えた二人は、バス停へと戻ってきていた。

　時刻は正午１２時。後１０分ほどでバスがやってくる。

「いやぁ〜、久々に楽しい旅行だったわねぇ〜。やっぱ疲れたときは温泉に限るわ」

「そ、そうだね……」

　生き生きとしているイリスとは対照的に、シェラはぐったりした様子で答える。

「あらどうしたの？いい若いもんが、そんなんじゃ駄目よ？」

「だ、誰のせいでこんな風になってると思ってるの？」

「もちろん、あなたのせい。自業自得」

「…………」

　即答されてしまっては返す言葉もない。

「はぁ〜……」

　代わりに大きなため息をひとつついた。

　経験は大きな財産とは言うが、疲れる経験はできればご遠慮願いたいシェラであった。

　やがてバスがやってきた。

「さぁ、乗りましょう……ん？」

　バスに乗ろうとしたイリスが、ふと足を止める。

　表示板には見なれぬ地名が書かれてある。

「そう言えば……」

　シェラは来るときに見た時刻表を思い出した。赤字のほかに、黒字で書かれたバスがあった。確か同じ時刻の１２時１０分で。

「お客さん、どこまで行きたいの？」

　運転手が声をかけてきた。

「あ、ボク達、駅まで行きたいんで。この後来るんですよね？」

「え？いや、こないよ。っていうか、これ１本だし」

「ええええっ！？」

　思わぬ答えにシェラは大声をあげた。

「だ、だって……あ、そっか。これに乗ってけば駅まで行けるんですか？」

「うんにゃ。全然違う方向」

「そ、そんなーーーー！！」

　シェラは目の前が真っ暗になっていった。次の駅まで行くバスといえば、２時間も時間がある。

「ふはははははははは！！」

　そんな落ち込むシェラを見て、エミルが本性を現した。

「人にこんな役を押し付けて、二人でのんびり温泉でいちゃいちゃしながらしっぽり濡れ場全開なことやってっからバチがあたったんだよ！！二人まとめて遭難するがいい！！雪の中に埋もれてしまえー！！わーはははははははははは！！」

　エミルは高笑いを残しながら、バスを発進させて行ってしまう。

「……どーゆーことよ……」

「だ、だって、バス停にはちゃーんと！！」

「どれよ？」

　イリスは怪訝な表情を浮かべながらバス停の時刻表を見る。そして問題の文を目にした。

「ね？ね？ちゃんと３月９日までって書いてあるでしょ！？」

「……あんた、これ３月９日じゃなくって１月３日、９日ってことじゃないの？」

「ええっ！！？」

　イリスに指摘され、シェラはもう一度よく見なおす。そして乾いた微笑みを浮かべた。

「あ、あはははは……」

「あんたって子は……あんたって子はああああああああ！！」

　イリスはシェラのほっぺたを思いっきりつねると、左右に引っ張る。

「い、いひゃいひょいひひゅ！！」

「しばらくそーやって面白い顔でいなさい！！」

「ひいいいい！！」

　そしてイリスの折檻は１０数分続けられた。