急行バスに乗った二人は、旅の疲れもあってかうとうとしていた。

　鉄道の旅の締めくくりがバスとはなんとも変な話ではあるが、交通手段がないのであれば致し方ない。

「ふわぁ〜……」

　シェラは大口を開けてぼんやりと窓の外を眺めた。

　と、バスが鉄道の駅らしきところに入って停車するではないか。

「えっ！？」

　シェラは目を丸くしながら、慌てて隣で寝ているイリスを起こした。

「イリス、イリスってば」

「ふわぁ〜？」

　イリスは大きな口を開けてあくびをすると、目蓋をこする。

「何よシェラ。一体どうしたってわけ？」

「ついたよ、駅に。飯山線の」

「ほえ？」

「『ほえ？』じゃないよぉ！！だから、あっ、お、おり……」

　シェラがもたもたしてる間にバスは発進してしまう。

「あーあ。イリスがもたもたしてるから」

「別にいいじゃないの。どーせ、長野駅まで行くんだからおんなじよおんなじ」

　シェラは大きくあくびをすると、再びうとうとし始める。

「もぅ、しょうがないなぁ……」

　シェラは停車しているバスの表示を見て、その駅の名前をはっきりと心に刻み込んだ。

　そこには『木島駅』と書かれていた。

「飯山線木島駅かぁ……そんな駅あったかな？」

　シェラは首を傾げるも、再びボーっと車窓を眺めた。

　そしてバスは飯山駅に止まり、その後上信越自動車道に乗って、長野駅へと向かうのであった。