最寄り駅である聖蹟桜ヶ丘駅についた二人は、電光掲示板を目の当たりにし、目を疑った。

　現在の時刻は８時３４分。

　しかし電光掲示板には、次の電車が「７時３０分　急行新宿行き」となっている。

「まずい……これは非常にまずいぞ……」

「えっ？どうして？電光掲示板が壊れただけじゃないの？」

「アホ。壊れたのは電光掲示板じゃなくて、ダイヤのほうだ」

「えっ？」

「だから、大幅な遅延が発生中ってことだ」

「あっ……」

　事の重大さにようやく気がついたシェラは言葉を失う。

　このままでは遅刻確定だ。

「とりあえず、ホームに行ってみよう」

　二人は改札を抜け、階段を上り、新宿方面のホームへと向かう。

　しかしそこには、案の定と言うべきか、大勢の人達が電車待ちをしていた。

　これでは先に進むにつれ、積み残しと言う事態が発生するほどの乗車率に成ることも十分考えられる。

「…………」

「いやだなぁー……こんな電車に乗るの」

「……行くぞ」

「えっ？」

　エミルは階段を下り、改札へと向かう。そして改札で慌しく作業をしている駅員に尋ねた。

「おい、ぺちゃぱい娘の上司な能無し駅員。新宿と京王八王子、どっちの方が早く電車くるんだ？さっさと答えないと部長から降格させるぞ」

「貴方こそ室長権限剥奪して平社員からやり直させますよ！！」

「ほう面白いこと言うな。貴様、余程実験体になりたいらしいな。エルフの分際でこの俺様に逆らおうとは」

「魔族の分際でこの私に指図しようなんてことのほうがチャンチャラおかしいんです！この世から抹殺しますよ？」

「ちょ、ちょっと！！キム部長も、エミルも、やめてよ！！話から脱線してるよぉ！！」

　シェラが慌てて二人の間に割って入る。

「……ふん、まあいい」

　エミルはコホンと咳払いをした。

「で、どうなんだ？」

「断言は出来ませんが、多分京王八王子行きの方が２〜３分、早くくるんじゃないかと」

「そうか。行くぞ」

　エミルはそれだけを聞くと、京王八王子方面へのホームの階段を上っていく。

「あ、待ってよ！」

　シェラも慌ててエミルの後を追いかけた。