１４時５０分。東京駅を出発したあさまは、定刻通りに上野駅へと到着した。

「やっぱり上野に着くのは早いなぁ。まぁ、所要時間３分だもんね」

　ペットボトルのお茶をごくごく飲み、一息つく。そしてお弁当をパクパク。

「焼肉弁当おいしいなぁ。この分だと、峠の釜めしも追加補充しないとね。もちろん、経費は湖さんに請求するからボクの懐は痛まない、っと。ちゃんと領収書貰っとかなくっちゃ」

　そして再びお茶をごくごく。

「それにしても今日は停車時間が長いなぁ。急病人かなんかあったのかな？それとも、乗車するのに手間取ってる人がいるのかな？」

　そしてお弁当をパクパク。

「こんなに長く停車してるなら、目の前のお弁当屋さんにも行けるかな？まぁ、どうせすぐ発車になるんだろうけど」

　とりあえず、携帯の時刻を確認する。１４時５３分。上野駅で既に３分も停車している。

「何かあったのかな？……まぁいいや。ごちそうさま」

　両手を合わせて、一礼。

　物の見事に焼肉弁当を完食。って言うか早すぎ！邪道喰いはよせー！！

「あーあ。焼肉弁当もう一個買ってくればよかったなー」

　シートに寄りかかり、何気なく携帯電話を開く。

　すると、まるでそれにあわせるかのように車内放送が流れた。

「お客様にお知らせいたします。ただいま、熊谷にて線路内立ち入りとの情報がありました。そのため、あさま５７９号は上野駅を１４時５０分に発車予定でしたが、現在、安全の確認を行ってる最中で、発車できずに停車しております。お客様にはお急ぎのところまことにご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いします」

「へぇー……新幹線の線路内に立ち入りかぁ。……まさか熊谷駅から飛び込み？それとも痴漢が逃げたとか？」

　シェラは軽くため息をつくと、すぐさま携帯電話のｉモードを起動した。

「情報はいってるかな？」

　いつも利用している某巨大掲示板の交通情報板にアクセスし、新幹線スレッドを見る。

　そこに、気になる情報が書き込まれていた。

『ときから旅客転落』

「まさか……ね……」

　シェラの頭に不安がよぎる。

　しかしこの掲示板には、ウソの情報も書きこまれることが多いため、その時にはまだ判断がつかなかった。

「まぁ、すぐに動き出すよねきっと」

　シェラは携帯電話をパタンと閉じると、シートによりかかった。