予定を大幅に遅れて聖蹟桜ヶ丘を出発した二人は、京王線で新宿まで行き、そこから中央線に乗り換えて東京駅まで向かった。

　そして、東京駅の総武本線ホームである、地下へと向かったのである。

「へー……東京にこんなホームがあったんだぁ……」

　シェラはキョロキョロと見回しながらエスカレーターを降りていく。手を引かれる柚子も同様に、物珍しそうにキョロキョロと見回していた。

　まるで本当の姉妹のようだ。

「だってボク達、とっても仲がいいもーん」

　いや、同レベルってことで。

「むかー！！」

　それに、胸もぺったんこだし。

「ムカムカムカーッ！！」

　いや、柚子の方が大きいかも？

「そんなわけないでしょ！！！ボクのほうが大きいもん！！！」

　まぁ、雑談はさておき。

　シェラと柚子は、総武本線ホームに停車していた特急さざなみに乗車した。

　初めて乗る車両というのは、結構ドキドキするものである。

　すぐさまシェラは、いつも乗りなれている特急とは違うこと感じ取った。

「あれ？トレイがない？」

　いつも乗っている特急についている、座席背面のトレイがないのである。

「ここって自由席だからないのかな……？」

　そういえば昔の特急あさま自由席には、トレイがついていなかったことを思い出す。

「まだこーゆー特急って、残ってるんだねぇ……」

　シェラは昔を懐かしむ。

　その横で柚子がもの珍しそうにあちこちを触っていたが、肘掛の蓋をパカッとあけると、声を上げた。

「あーみてみて。シェラねぇ、こんなところにトレイが入ってるよー」

「えっ！？」

　シェラも驚いたように、あわてて肘掛の蓋を開ける。

　確かにそこに、トレイは存在していた。

「へー。こーゆータイプのトレイもあるんだ」

　シェラは目を丸くしながら、トレイを引っ張り出すと、聖蹟桜ヶ丘の物産展で買った弁当をその上へとおいた。

「ちょっと得した気分かも」

　そして列車は動き始めた。