二人が乗車した特急わかしお号安房鴨川行きは、定刻通りに東京駅を出発した。

　行川アイランドまで２時間程度の旅である。

　勝浦までは特急券必須で、勝浦から先は各駅停車扱いになるとの車内アナウンスが流れる。

「だから特急券買えなかったんだね。勝浦まで買えばよかったんだ」

　シェラは納得したが、隣に座っているレイアは釈然としない。

「（嫌な予感がする……）」

　そこへ、白髪の車掌が車内改札にきた。

「切符を拝見します」

「はい。すみませんが、自由席特急券ください。あと、区間変更もお願いします」

　そしてシェラは、車掌に持っていた切符を渡す。

「どちらまで？」

「行川アイランドまで」

「行川？」

　車掌はその言葉に、ピクリと眉をひそめた。

「そういうことか。ククク」

　そして低い笑い声を上げる。

「ちょ、ちょっとエミル！？その笑い何！？」

　シェラは抗議の声を上げるが、エミルは何も答えず、機械に情報を入力する。

「じゃあ、区間変更代と自由席特急券代をいただこうか。レイアも同じだな？」

「は、はい」

　レイアはコクンと頷き、紙幣を車掌に渡す。

「それじゃあ、これね。後お釣り」

　車掌は機械から出てきた切符代わりの紙とおつりをレイアに渡す。

「しっかし、お前も大変だな。こんなペチャパイ女神のお守りをさせられるなんて」

「むー！！ボクペチャパイじゃないもん！！」

　シェラは再度抗議の声をあげるが、車掌はどこ吹く風と言った様子で、一礼する。

「それじゃあ、よい旅を」

「言われなくてもわかってるよ」

　ムスっとふくれるシェラに、エミルはニヤリと笑った。

「ようこそ、秘境駅へ」

「えっ！？」

　予期せぬ一言に、シェラはエミルを見る。

　しかし彼はその場を颯爽と去って行った。

「ちょっと！今の言葉、どういう意味なの！？」

　シェラは疑問をぶつけるが、答えが返ってくるはずもない。

「…………」

　そんなシェラの横で、レイアがジト目で彼女を睨んでいた。