「うわぁ〜……」
　山にはたくさんのふきのとうが、小さな顔をちょこんと地面からのぞかせていました。
　やっぱり探せばあるものです。今日も新しい発見をしました。
「すごいです！わたし、こんな場所があるなんて知りませんでした！」
「あのなぁ……こんなことで感激するなよ」
　隣では晶君がため息をついています。彼、萩荻晶（はぎおぎあきら）君はわたしがこの高校に転校して来た時に一番最初に話し掛けてくれた人で、わたしの大切なお友達だったりします。しかも彼のお家はわたしのお家の隣りなので、まるで昔からの幼馴染のような気がします。
「だいたい料理って……こんなもん食えるのか？」
「ふきのとうはとってもオイシイですよ。てんぷらにしてもオイシイし、ふきみそにしてもご飯のおかずに最適です」
「へぇ〜……お前って物知りなんだな」
「そ、そんなことないです。わたしが住んでたところではふきのとうやイナゴなどを食べるのが一般的てしたから」
「イナゴ？」
「ご存知無いんですか？バッタみたいな昆虫です。秋になるとよく田んぼに出てきたんですよ」
「そ、そんなものを食べるのか！？」
「はい。佃煮にするととってもオイシイんですよ。今度晶君にもご馳走してあげますね」
「イヤ、遠慮しておく……」
　晶君はなんだか気持ち悪そうに下に俯いてしまいました。一体どうしたんでしょう？
「あの、気分が悪いんですか？」
「い、いや大丈夫。気にしないでくれ」
「そうですか。それならいいんですけど……」
　晶君はそう言ってるものの、なんだか心配になってしまいます。私が至らないばかりに晶君に何かご迷惑をかけては、晶君に申しわけありませんから。
　それにしても、晶君が一緒についてきてくれるとは思いませんでした。
　お父さん、お母さん、今日はなんだか素敵な日です。
「それにしても……」
　晶君は顔を上げると、わたしのことをじっと見つめました。
「な、なんでしょう？」
「お前って、みかけによらず凄いんだな。いつもは鈍くさいのに」
「そ、そんなことないですよ！！わたしなんか全然凄くないです！！え、えっと、それじゃあ早速、取材を始めましょう」
　わたしはクルリと１８０度向きを変えると、山の奥へと向かって進み始めました。
　まだ心臓がドキドキしています。晶君はとってもカッコいいのでつい見とれてしまいます。
　晶君があんなこというなんて思いませんでした。
　なんだかとっても幸せな気分です。
　神様、わたしこんなに幸せでいいんでしょうか？
　その日は晶君と一緒に、日が暮れるまでふきのとうを取ってました。