「うわぁっ、すっごーい！！」
　目の前に運ばれてきた料理の数々を見て、流水音は感嘆の声をあげた。
　そこには滅多に口に出来ないような豪華絢爛な料理が並んでいる。
「ちょっと、こんなに奮発しちゃってもいいの？」
　流石に心配になったエリザがアイナに尋ねた。
　しかしアイナは心配するなといわんばかりに胸をドンと叩く。
「今日は海鮮のいい物が入ったから。気にしないで」
「気にしないで……って、これってウニでしょ？それにこんな大きなアワビに大トロ、キャビア、おまけにフカヒレまで……」
「大丈夫よ。実はね、知り合いの漁師さんが好意で持ってきてくれたの」
「そうなの？」
「そうよ。だから遠慮しないで」
「アイナ……ホント、感謝するわ」
「いえいえ、どういたしまして」
　アイナは優しく微笑んだ。
「それじゃあ、ゆっくり楽しんでね」
　アイナはそう挨拶すると、部屋を出ていった。
　待ってましたとばかりに優希達はエリザをみる。
「先生、これ、そんなに高級なんですか？」
「高級も高級よ。アイナ、随分奮発してくれたようね」
「あの……どれくらい高級なんですか？」
「そうね……」
　エリザは顎に指をくっつけて考えこむ仕草を見せると、優希の御膳を指差した。
「その御膳だけで福沢諭吉が軽く１０枚はとんでく、かしら？」
『えええ〜っ！？』
　その言葉に３人娘は自分の膳を見た。
　途端に箸をつけるのが怖くなってくる。
「いいのかなぁ……あたし達がこんな高級な物ご馳走になっちゃって」
「そうですよね……なんだかバチがあたるような気がします」
「なんだか箸をつけるのがもったいないですぅ〜」
「もぅ、あなた達。さっきアイナが言ってたたでしょ？遠慮することはないわよ」
「うーん……そうよね……料理は食べてこそ、だもんね」
　流水音はおもむろに蟹のハサミをふたつ、それぞれの手で持ちあげた。
「鈴科先輩、それはなんですか？」
「なにって……もちろん、バルタン星人」
　流水音はほくそえみながら答える。
「鈴科先輩ズルイですぅ！！それ、私がやろうと思ってたのにぃ！！」
　七衣が非難の声をあげた。
「へへーん。早い者勝ちだよーだ」
「あなた達……何やってるのよ？」
　エリザが呆れたように言った。
　流水音と七衣はテレ笑いを浮かべる。
「まぁ、いいわ。それじゃあ乾杯しましょ」
「あ、はい」
「優希ちゃん、グラス貸して」
「そっちにオレンジジュース、ありませんかぁ？」
　４人はそれぞれコップのなかに飲み物を注ぐと、天にかざした。
「それじゃあ、旅の成功を祝って、かんぱーい！」
『かんぱーい！！』
　そして勢いよくグラスをぶつけ合う。
「さーって、それじゃあ何から食べよっかなぁ」
「フカヒレって、確か美容にいいんですよね」
「そうそう、流石優希ちゃん、よく勉強してるわね」
「そ、それほどでも……」
「照れない照れない。とりあえず、あたしはこのウニご飯から……って、なにこれ？山の用にウニが盛られててご飯がほとんどないじゃない」
「私はこの黒い粒粒を」
「このアワビとってもおいしいですぅ」
「この大トロ、よく脂が乗ってて凄くおいしいわ」
　それから４人はしばらくの間、楽しく談笑しながら豪華絢爛な料理の数々に舌鼓を打つのであった。