翌日。
　朝早く家を出た俺達は、目的地目指して電車に揺られていた。
　今回はみこピーの運転はご遠慮願ったので（最も、車を壊したせいで奈緒先生にこっぴどく怒られたらしく、そんな元気もなかったみたいだけど）、目的地までの移動手段は車から鉄道に変わっていたりする。しかも、各駅停車ではなく特急だ。
「いやぁ、海なんて久しぶりだから、誘われた時はどうしよかと思っちゃったけど。本当楽しみ〜」
　朝からご機嫌なのは、今回みこピーの代わりに来た花乃香。
　先程からメモ帳の中にいろいろ書き込んでいるところから、またロクでもない小説でも書こうとしていることがうかがえる。
「やっぱりみんなで旅をするって言うのは、楽しいわね」
　そして花乃香の隣に座っている瑞希は、おいしそうに駅弁を頬張っている。
「見てくださいお兄様！景色が取っても綺麗ですよ！」
　その瑞希の隣ではしゃぐ静乃。
「どうしてこうなるのかしら……」
　対照的に、不満アリアリな表情を浮かべるマリィ。
「ははは……」
　俺も微妙な雰囲気に、苦笑せざるを得ない。
　配置的なものを言うと、自由席の３人がけの座席を回して向かい合うようにして、回した席の窓側から静乃、瑞希、花乃香、そしてもう一方の座席の窓側から俺、マリィの順で座っている。
　座る順番でもかなり揉めたんだが、そこはうまく花乃香がまとめてくれた。これは俺にも意外だったんだが、まぁ、花乃香にしてみればネタを提供するお礼のつもりか、それともこのこと自体もネタにするつもりなんだろう。
「あら？どうしたのマリィ？元気ないわね」
　そんな不機嫌なマリィをみて、瑞希は箸を止めると、膝の上に抱えていた弁当をマリィに差し出した。
「この駅弁食べる？おいしいわよ、この鶏めし」
「いらないわよ！」
「お米嫌いなんですか？それじゃあ」
　瑞希に変わって、今度は静乃が膝に抱えていたお弁当をマリィに差し出す。
「こちらのチキンカツサンドなんかどうですか？とってもおいしいですよ」
「い・り・ま・せ・ん！！」
　マリィは静乃を睨みつける。
「マリィってば本当、好き嫌いが多いわよね」
「ええ。まったくです」
　対照的に瑞希と静乃はフッと笑った。