電車に揺られること２時間。
　目的地である海岸に着いた俺達は、早速海の家で着替えて、浜辺へ集合することになった。
「それじゃ、また後で」
　マリィ達と別れた俺は、急いで水着に着替え、ビーチパラソルをレンタルし、手頃な場所へと設置する。
　１週間前に来た時もこうして俺が場所を確保したんだよな。
　まぁ、あの時はマリィ、瑞希、静乃が水着の見せ合いになって、みこピーが俺の隣で廃人になってたけど。
　でも……そうか……あれから１週間も経つのか。
　まるで昨日のように感じるあの出来事も、今となってはいい思い出だ。
　今日は一体どんなことになるやら……
「お待たせー」
　一番最初に現れたのはマリィであった。
　マリィはオレンジ色のビキニ姿で、俺の前に来るなり、ポーズをとる。
「どうかな？」
「ああ、似合ってるよ。とってもかわいい」
　俺は素直に感想を述べると、マリィは幸せいっぱいの表情を浮かべた。
「ホントに！？天使みたいにかわいい！？」
「あ、ああ……」
　あまりの迫力に、俺は思わずウンウンと、首を力強く縦に振る。
「嬉しい……」
　マリィはぽわっと頬を上気させた。
「何が天使みたいですか。言うに事欠いて。マリィ先輩の場合は天使の上に『だ』がつくじゃないですか」
　そんなマリィに冷や水をぶっ掛けたのは、静乃であった。
　青いセパレート水着姿の静乃はマリィにきつい一言を浴びせると、おもむろにポーズを取った。
「お兄様？どうです？似合ってますか？」
「ああ、とっても似合ってるよ。すっごくかわい」
「やだ、そんなかわいいだなんて。お兄様、ちょっと恥ずかしいです」
　静乃は俺の言葉に、夢見心地な感じで、嬉し恥ずかしそうにはしゃいだ。
「ちょっと静乃ちゃん！！それどーゆー意味！？」
　しかしそんな静乃を、マリィが現実に引き戻す。
「そのままの意味ですよ？」
　静乃はクスッと小悪魔的な笑みを浮かべた。
「マリィ先輩が天使だなんてとんでもない。貴女には『天使』より『堕天使』の方が、表現的にピッタリと合います」
「堕天使マリィ……」
　その表現のうまさに、俺は思わず噴出してしまいそうになる。
「それは違うわよ、矢城さん」
　しかし、その表現に異を唱えたのは瑞希であった。
「どうかな？功司くん」
　そして茶色のビキニ姿の瑞希は、俺の前でポーズを決める。
「あ、ああ。似合ってるよ。すごく」
「そう……ありがとう」
　俺の言葉に、瑞希は頬を赤らめる。
「……で、何がどう違うんだ？」
　俺が瑞希に尋ねると、瑞希はコホンと咳払いをして人差し指をピンと立てた。
「いい？堕天使といっても、天使は天使。マリィにそんな高尚なイメージに合わないわ。だから、『だ』じゃなくて『ぺ』ね。頭につくのは。マリィなんか『ぺ天使』で十分よ」
「確かに。それならマリィ先輩のイメージにぴったりですよね。ペテン師そのものですし」
　静乃はポンと手を打つ。
「コラー！！」
　しかしマリィは、いわれのない（？）中傷に激怒した。
「なによ静乃ちゃんもミズキチも！！あたしは堕天使でもペテン師ないですよーだ！！功司君専用の天使だもん！！」
「いきなり変なこと言わないでちょうだい！！詐欺師のクセに！！」
「そうです！！お兄様は貴女の事なんかなんとも思ってないんですから！！」
　瑞希も静乃も、激しく応酬する。
「まあまあ。三人とも落ち着いて」
　そこへ割って入ってきたのは、花乃香であった。
「で、牧村君、どうかな？」
　そして緑のビキニ姿の花乃香は、三人と同じようにポーズをとる」
「う、うん。すっごくかわいい」
　俺は、シンプルに感想を伝える。
「そ。ありがと。なんだか恥ずかしいな」
　花乃香は俺の言葉に頬を赤らめた。
　恥ずかしいならそんなポーズとらなければいいと思うんだが……
「あ、違うの。これはね、マリィさん達がやってたから、私もやった方がいいかなぁって思って」
　まるで俺の考えを透視したかのように、弁解を始める花乃香。
　そしてコホンと咳払いをすると、瑞希を見た。
「ちなみに、春日さんや矢城さんは、マリィさんを天使以外で表現するとしたら、どんな表現する？」
「悪魔」
「悪魔」
　花乃香の言葉に、瑞希と静乃は声をハモらせて即答する。
　マリィはその言葉を聞いてさらに激怒した。
　そしてこの騒動は１５分くらい続いた。